ガンダムSEED劇場版をめぐる2006年から2023年までの経緯
『ガンダムSEED』は2000年代のガンダム作品として知られ、2006年頃には劇場版製作の話も持ち上がっていた。
そして20年以上経った2023年7月、ついに劇場版ガンダムSEEDの映画第1弾PVが公開されるに至った。(映画公開は2024年1月26日とのこと)
今回はこれまでのSEED劇場版の製作をめぐる経緯や、20年以上に渡りSEEDの劇場版が公開されてこなかった理由についてまとめてみることにした。
SEED劇場版の現在までの経緯は以下の通り
- 2006年:「”X” plosion GUNDAM SEED」が発表
- 2007年:SEED劇場版映画公開予定
- 2008年:脚本未完成、製作チーム解散
- 2009年:SEED劇場版白紙宣言
- 2010年:SEED劇場版公開予定表から消失
- 2011年:SEED・SEEDD等の公式HPの(C)表記から毎日放送消失
- 2012年:ガンダムSEED HDリマスター発売決定
- 2021年:GUNDAM SEED PROJECT ignited発表
- 2022年:SEED劇場版製作中
- 2023年:劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』pv公開
2006年:「”X” plosion GUNDAM SEED」が発表
5月、新プロジェクト「“X” plosion GUNDAM SEED」が発足し、サンライズ公式ホームページでは、その中で『ガンダムSEED』劇場版が発表される。
(製作作業はすでに開始されていたという)
なおメカデザインを担当する大河原邦男氏によれば「デザインは8割出来上がっていた」とのこと。
(大河原邦男氏氏のツイッターより)
2007年:SEED劇場版映画公開予定
当初の予定では00放送開始前、07年夏までに公開予定だった。
2008年:脚本未完成、製作チーム解散
- 3月、未だ脚本が完成せず、プロット止まりな事が判明。(『月刊アニメージュ』2008年4月号、脚本家両澤千晶へのインタビューより)
- 劇場版製作スタッフ・スタジオが解散が判明。(『「MGフォースインパルスガンダム」PV制作決定』報道より)
- 6月、福田己津央監督『SEED Club mobile』のコラムで、脚本担当で妻の両澤千晶氏(故人)の降板を拒否。
- 10月頃、『ガンダム00』の劇場版化がサンライズで決定。(09年4月『ラジオソレスタルステーション最終回 富士急公開録音』水島監督の証言)
2009年:SEED劇場版白紙宣言
- 3月、『ガンダム00』劇場版化発表
- 4月、版権を持つ、毎日放送の竹田プロデューサー、SEEDの劇場版制作をしていない事を明言。(『創』09年5月号)
- 6月、サンライズ宮河常務、「映像化を検討中」と発言。
制作決定が検討中にまで大幅後退し、事実上の白紙化宣言(アニメディア09年7月号のインタビュー)。
福田監督も同インタビューやコラム等で、今後の予定が未定であると発言。 - 12月、福田監督は「新しい別作品の企画協力に参加」するとコラムで発言。
2010年:SEED劇場版公開予定表から消失
- 9月、ガンダム00劇場版公開。
- 11月、シネマトピックスの2010年の公開予定表から消失。
2011年:SEED・SEEDD等の公式HPの(C)表記から毎日放送消失
1月、SEED・SEEDD等の公式HPの(C)表記から毎日放送消失する。
SEED・SEEDDに関わる権利・契約を解消した事が判明。
2012年:ガンダムSEED HDリマスター発売決定
HDリマスター発売の際、劇場版製作についてアナウンスが検討されるが、脚本未完成のため延期される。
2021年:GUNDAM SEED PROJECT ignited発表
バンダイナムコはTV放20周年を迎える『機動戦士ガンダムSEED』シリーズの新プロジェクトとして、「GUNDAM SEED PROJECT ignited(ガンダムシード プロジェクト イグナイテッド)」を発表。
以下の様な予定に加え、福田己津央監督のもと、TVシリーズの続編となる劇場版を鋭意制作中とのアナンスがあった。
- 中国・上海での「実物大フリーダムガンダム立像」の設置
- 「GUNDAM docks at Shanghai」
- 『機動戦士ガンダムSEED』シリーズの新作ゲームの開発
- 公式外伝となるガンダムSEED MSV「機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE(エクリプス)」のコミック連載とガンプラの展開
2022年:SEED劇場版製作中
2022年、8月時点ではSEED劇場版は製作中とのことだが、わかっている内容としては以下のものがある。
- SEED劇場版はガンダムSEED DESTINYの続編
- 主人公はキラ・ヤマトではなく、シン・アスカ
- 新キャラ、MSが登場する
- T.M.Revolutionの新曲の起用
1についてはSEED DESTINYの続編というのが妥当だろう。
新たな時代設定でも良いかもしれないが、わざわざSEEDの人気キャラであるキラやアスラン、シンを登場させないのは不評を買うのは目に見えているからだ。
2についてSEED DESTINYではあまりにもキラの超人ぶりな活躍があって、本来主役であるシンの存在意義を完全に奪ってしまっていた。
コミックボンボンなどの一部作品では、シンが主人公をしているので、この劇場版でもそうなることを期待したい。
ちなみに劇場版の没案として大量のキラクローンが、キラ、アスラン、シンと敵対するというものがあったそう。
SEED DESTINYで完全に敵なしとなったキラを超えるのは容易でないため、この苦肉の没案を超える妙案が浮かぶと良いのだが。
本当に鋭意…制作中です! 映像では編集してますけど、本当はもっと色々とお話しました。DESTINYのその後の世界なので、完全な続編です。キャラクターも変わりませんか、新キャラもあり、新モビルスーツもデザイン設定が大量になってしまって、調整してます。流石にテレビ100話以上の後は設定も大量。
— 福田 己津央 (@fukuda320) June 22, 2021
3については、やはりキラのストライクフリーダムや、シンのデスティニーガンダムの新機体や曲を担当する、T.M.Revolutionの西川貴教氏が演じたハイネ・ヴェステンフルスのグフイグナイテッドなどに代わるものが出てきそうだが、福田 己津央氏のツイートによれば大量新キャラ、MSがにあるため調整中とのこと。
4については「INVOKE」や「ignited-イグナイテッド- 」など、SEEDやSEED DESTINYの曲を担当してきたT.M.Revolutionの起用があるとのこと。
当然プロの作曲だし、曲自体はとても良いものが出来上がるだろうが、それ以前の問題(脚本など)があまりにも大きい気がしてならない。
SEEDの劇場版は本当に製作されるのか?ツイッターでの反応
上記の福田 己津央氏のツイートによれば劇場版は製作中とのことだが、正直疑わしい。
なぜなら、1度2006年から劇場版の制作が発表されたのに、2009年に映画化白紙宣言されるという出来事でガンダムSEED、SEED DESTINYファンを平然と裏切っているからだ。
もちろん、SEED劇場版の脚本担当だったの両澤千晶氏は(アニメージュ2008年4月号では)体調も思わしくない状況の中、苦心し、それでも自分の手で作品は完成させたいという気持ちがあったそうだが、結局あやふやのままになっていたことは決して許されることではない。
(終わる終わる詐欺などをネタにできた銀魂とはわけが違う。)
ツイートでもこのSEED劇場版に製作について不安、疑問視する声はあるようだ。↓
失礼ながら、本当に見れるのか不安がとても大きいです。公開まで辿り着けることを期待しています。
— サチ (@white2017t) June 22, 2021
↑SEED劇場版化の期待はあるものの前例があるため、実現するか不安は大きい。
何年後かなんて教えてくれませんよね?
— delta (@delta36714371) June 22, 2021
↑2021年に製作中との発表があっても、前例があるため続報が出るのかすら疑わしい。
また、閃光のハサウェイの続編やガンダムUCの映画化の噂、2022年10月からは「機動戦士ガンダム彗星の魔女」の放送もある事から、ガンダムファンとしては信用できそうにないSEED劇場版より、確実性の高いガンダム劇場版の作品に期待するのは当然のことである。
2023年:劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』pv公開
2023年7月2日、水星の魔女2期の最終回と同時に、ついにガンダムチャンネルよりSEED劇場版のpv『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開される。
pvではキラとラクスの2人が登場したが、アスラン、シンなどの姿は見当たらなかった。
また登場したMSもジンだけであり、構想中ということなのだろうか?
pvから推測するにやはり劇場版の主役はキラであり、ストライクフリーダムガンダム(もしくはその後継機)に乗る感じなのだろうか。
pvは第1弾とのことなので、続報に期待したい。
↑pv第2弾も公開。
ムービーの主役ボイス?はデュランダル議長で進み、登場人物には、キラとラクス以外にも、シン・アスカ、声優が変更となったカガリ、アスラン、マリュー・ラミアス、ムウ・ラ・フラガにルナマリアの姿が登場。
新キャラ(桑島法子ボイス)のアグネス・ギーベンラート(ルナマリアの隣)とキラ達は共に女王陛下(?)のアウラ・マハ・ハイバルにあいさつするシーンがあった。
機体もストライクダガー、デストロイガンダムなどが登場し、攻撃を受けるアークエンジェルの姿も見られた。
ラクスは「止めてください キラを…」と言っていたが、もしかしたらキラは闇落ちしたのかもしれない。
余談ではあるが、ラクスの時も気になったが、なぜかpvに登場する女性キャラの唇が皆腫れているように見えるのは何なのだろうか?
そして第3弾pvも公開され、キラのライジングフリーダムやアスランのイモータルジャスティスなどの機体の姿も紹介される。
スポンサーリンク
ガンダムSEED劇場版計画が、20年以上白紙となっていた2つの理由
以下がSEED劇場版が白紙化した2つの理由と言われている。
- 脚本が仕上がらず、製作したくてもできないから
- 製作会社やスポンサーに見限られたから
理由①脚本が仕上がらず、製作したくてもできないから
- 大河原氏によるメカデザイン、テーマ曲(T.M.Revolutionが内定), キャラの新声優(カガリとディアッカの中の人が交代?)など、周辺作業は大方完成していた。
しかし、2008年3月時点になっても両澤千晶氏の脚本が上がらないため、それ以上製作が困難となった。 - 両澤千晶氏の脚本が仕上がらない以上、脚本交代の打診もやむ負えないにも関わらず、福田監督により拒否された。
このことで、完全に製作の行き詰まり、完成の目処が全く立たない状況となる。(1度は脚本が提出されたものの、酷い出来の同人誌程度のクオリティだとされ、すぐに没となった。)
ちなみに、脚本が書けない理由としては、「ストーリーの展開が困難だった」ことが考えられる。
キラ・ラクス陣営に対抗できる組織はSEEDD以降見当たらず、ストライクフリーダムの無双とも言える活躍に、張り合える存在を見出すのはなかなかに困難だといえよう。
また一説には新主役機がユニコーンガンダムと類似し、一からやり直しをせざる負えず苦戦していたとも言われている。
理由②製作会社やスポンサーに見限られたから
- 版権を持つ毎日放送が、正式にスポンサー契約を解除したことで、毎日放送に権利の有る劇場版の企画自体も契約解除となり、劇場版の企画は許可なしでは実現不可能となった。(加えて製作資金源を失うこととなり、製作したくても予算がない。)
- 主題歌が使用されないことによるレコード会社は損害を被ったことで関係悪化。(再び企画を再開するならば関係改善が必須となる)
- (福田監督と懇意の仲の吉井社長が退任し、)新体制となったサンライズは、上記の理由も含めて製作が行き詰ったSEED劇場版を捨て、好調だった00の劇場版化へと方向転換した。
新品価格 |
まとめ
これまでガンダムSEED劇場版が完成しなかった理由を一言で表すなら、「脚本が完成しなかったため、製作会社・スポンサーに見限られ製作中止になった」ということである。
故両澤千晶氏が脚本を自分でできなくとも早急に代役を立てれば、まだ可能性はあったにもかかわらず、それを特に理由もなく(そう思えた)断ったあたりは1ガンダムファンとして腹立たしい。
しかし、2023年7月、今度こそついにpvも公開になったため、ガンダムSEED、DESTINYファンを裏切ることなく、SEED劇場版を実現させて欲しいものだが、前例があるため、「期待せず楽しみに待っておく」というのが多くのファンの心情ではなかろうか?