作品の概要
舞台は100年戦争末期の惑星パルミス、「アルボガ王国」。
周囲を砂に囲まれたこの場所は、かつて多くの鉄の棺桶(AT)が撃鉄を交わした成れの果て、
ATから漏れ出したポリマーリンゲルが青白い炎を上げ、人魂を見せる乾いた墓場。
戦場の哲学者、ボジル・ドン・ハリバートンこと、フィローはこの王国でフリーランスのボトムズ乗りとして暮らしていた。
そんなある日、フィローは哨戒任務から帰還し、ふらっと立ち寄ったディックの店「DICKS BAR」で酒をたしなんでいると、
フロアーではこのバーの歌姫クレメンタイン・クリスティーが歌い、ホワイティーと呼ばれる男がいた……。
そして終わるはずのない100年にも及ぶ戦争が急展開を迎えるとき、フィロー、クレメンタイン、ホワイティーの3人の物語は加速する。
前回のあらすじ

いよいよバララントは「アルボガ王国」をその支配下に置くことが決まり、この国はその国としての体裁をも失いかけていた。
そんな中、ディックに協力を仰ぎながら、フィロー未だつかないホワイティーとの決着をつけるべく、店へと向かう。
見守るクレメンタイン、挑むホワイティーの2人を守る為、敢えてズルをしてまでも勝負に勝ち、近衛儀杖隊に変装することに。
王国の西門を抜けると、マランガの大潮に呼び寄せられた、使節とは名ばかりのバララント軍勢に向かって、フィローと近衛儀杖隊のATは砂漠を走る。
その時フィローは、戦場で何を思い考えるのだろうか?
注記のない限り画像は全てhttps://www.yatate.net/より
葬列の鉄の騎士
「アルボガ王国」を離れ2時間。フィロー達衛儀杖隊のAT隊は、予定の地点まで歩みを進めていた。
するとそこには、バララントの先鋒隊が待ち受けていたのだ。
衛儀杖隊は儀式を行い、バララントの使節に栄誉の礼を尽くしたが、バララントは当然のごとくフィローたちに弾丸の雨を降らせるのだった。
煙幕を展開し視界をくらませながら、フィロー達衛儀杖隊のAT隊はバララントに白兵戦を仕掛ける。
フィローたちの乗るクエント製ATの性能はバララントのそれを圧倒するものだったが、多勢に無勢。
「ホワイトオナー・カスタム」のパイルバンカーが敵を貫こうとも、限界は近づきつつあった……。
生き延びることとは。
画像出典:Pixabayより
フィローのATが限界を迎えた時、フィローはATを脱ぎ捨て、走った。
走った、走って、黒煙の中を追ってくる敵の影を気にしながら、砂丘を登り、目印まで移動を続けた。
そこには砂地にカモフラージュしたフィローのATがあった。
ATに乗り込むとフィローは「地獄に落ちても仕方がない……」とつぶやき、
ホワイティー、クレメンタイン、ディックに思いを馳せながら、鉄の棺桶で休息を取るのだった。
マランガへ
フィローは目覚めると、予定のルートをたどり、カースニーの遺跡でバララントの渡河作戦の様子をうかがった。
そしてフィローは自身のATの回線を開き、100年戦争の再開を願うもの、ATの開発に携わるテストパイロットとして通信を始めるのだった。
「ブラッドセッター」、それがフィローの乗り込んだ再戦へ向けての実験用ATの名であり、
マランガを渡らんとするバララントのAT約200をよそに「戦場の哲学者」として、
フィローは「蹴散らし擦り抜ける一筋の道」を探し、マランガの流れに向けてカースニーの丘を駆け下るのだった……。
まとめ
・ホワイティー、クレメンタイン、ディックはどうなったかわからないが、フィローは「生き延びる道」を行くためマランガを進み戦場へ。
とっ散らかった思いは
いくら考えてもまとまらない
いまは……過ぎたことの正否は問うまい
いえることは一つ
死ぬまでは
生き続けなければならないということだ
死には意味がない
それがどんなたる葬列に彩られようとも─完─